館長の美術館ザッピング96 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」の見どころ①(10月26日まで) ◎「塗壁(ぬりかべ)」 ~水木しげるの妖怪の秘密~ 水木しげる氏の長女・原口尚子さんによるギャラリートーク付先行特別鑑賞会のお話は、とても面白かった。特に、水木しげるの妖怪は、背景や驚く人間を配置することで成り立っているという話には目からうろこが落ちた。 たとえば「塗壁(ぬりかべ)」。有名な妖怪で、ショップではアクリルスタンドまで売っていて、アイドル並みの人気だ。四角い体に短い手足。小さな頼りない目がついて、その姿はかわいらしくすら感じられる。しかし展示室の最後に立っている2メートルはありそうな大きな作り物を見ると、少しぎょっとする。しかも、目がまばたいたりして、あまり気持ちがいいものではない。その雰囲気を増しているのは、森の中を描いた背景だ。その森は原画の一部を再現しているだけなので、まだましかもしれない。 原画ではどうなっているか? 暗い森の中に立ち、出くわした猟師が銃を放り投げて逃げ出す様子が描かれている。うっそうとした森で、こ
館長の美術館ザッピング96 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」の見どころ①(10月26日まで) ◎「塗壁(ぬりかべ)」 ~水木しげるの妖怪の秘密~ 水木しげる氏の長女・原口尚子さんによるギャラリートーク付先行特別鑑賞会のお話は、とても面白かった。特に、水木しげるの妖怪は、背景や驚く人間を配置することで成り立っているという話には目からうろこが落ちた。 たとえば「塗壁(ぬりかべ)」。有名な妖怪で、ショップではアクリルスタンドまで売っていて、アイドル並みの人気だ。四角い体に短い手足。小さな頼りない目がついて、その姿はかわいらしくすら感じられる。しかし展示室の最後に立っている2メートルはありそうな大きな作り物を見ると、少しぎょっとする。しかも、目がまばたいたりして、あまり気持ちがいいものではない。その雰囲気を増しているのは、森の中を描いた背景だ。その森は原画の一部を再現しているだけなので、まだましかもしれない。 原画ではどうなっているか? 暗い森の中に立ち、出くわした猟師が銃を放り投げて逃げ出す様子が描かれている。うっそうとした森で、こ
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館長の美術館ザッピング101 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「海の光」展について①(11月16日まで) ◎ガードナー夫人書簡と田中信太郎「風景は垂直にやってくる」 「海の光」展は、11月16日で終了した。見られなかった方のために、展示室で気がついたことを報告したい。 岡倉天心は新しい美術を作り上げるために、日本美術院の画家たちをバックアップし続けた。その思いを引き継ごうとしたのがこの展覧会。同時に、本館が所蔵する資料と作品が響きあう様子を演出したいという思いもあった。岡倉天心記念室で展示されていたガードナー夫人が書いた書簡が気になっていたが、今回、田中信太郎の「風景は垂直にやってくる」と同じ部屋に並べてみて、その効果が思いがけないもので驚いた。 ガードナー夫人はボストンで天心を支援した大富豪。天心を深く敬愛していた。五浦の天心宛に出した手紙は、タゴールの歌詞を書いたもの。その一節に「もし、嵐の夜に明かりを灯すものが誰もなく、あなたに扉を閉ざすなら、おのれの心を稲光で灯し、一人燃えよ」という一節があった。その「稲光」という言葉が、そのまま田中の作品と重なって
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館長の美術館ザッピング101 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「海の光」展について①(11月16日まで) ◎ガードナー夫人書簡と田中信太郎「風景は垂直にやってくる」 「海の光」展は、11月16日で終了した。見られなかった方のために、展示室で気がついたことを報告したい。 岡倉天心は新しい美術を作り上げるために、日本美術院の画家たちをバックアップし続けた。その思いを引き継ごうとしたのがこの展覧会。同時に、本館が所蔵する資料と作品が響きあう様子を演出したいという思いもあった。岡倉天心記念室で展示されていたガードナー夫人が書いた書簡が気になっていたが、今回、田中信太郎の「風景は垂直にやってくる」と同じ部屋に並べてみて、その効果が思いがけないもので驚いた。 ガードナー夫人はボストンで天心を支援した大富豪。天心を深く敬愛していた。五浦の天心宛に出した手紙は、タゴールの歌詞を書いたもの。その一節に「もし、嵐の夜に明かりを灯すものが誰もなく、あなたに扉を閉ざすなら、おのれの心を稲光で灯し、一人燃えよ」という一節があった。その「稲光」という言葉が、そのまま田中の作品と重なって
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館長の美術館ザッピング98 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」の見どころ③(10月26日まで) ◎美術館体験 ~絶景とショッピング~ 10月11日(土)午後、「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」は、2万人目の入場者を得て、記念のくす玉割を行った。一つの展覧会で2万人を超えたのは、2015年8月の「異界へのいざない ― 妖怪大集合」展以来。くしくも、その時も水木しげる先生の妖怪画が出品され、先生に御来館いただいている。 今回の特別ギャラリートークで、長女の原口尚子さんが、その時の様子を印象深く語ってくださった。当時、体調がすぐれずふさぎがちだった先生を心配して、尚子さんが展示中の当館への旅行に誘ったのだという。水木先生は大変喜んでくれたとのこと。水木先生はその年の11月に亡くなられたので、尚子さんの「最後の遠出が五浦だったのです。」という言葉には感激した。五浦の絶景の海を最後にご覧いただけたことは、当館にとって光栄だった。現在のたくさんの人々の来館は、水木先生にも喜んでいただけていると思う。 さて、来館後に記念品として妖怪グッズを求め
館長の美術館ザッピング98 小泉晋弥館長が、美術館を歩き回って気づいたことを綴ります。 「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」の見どころ③(10月26日まで) ◎美術館体験 ~絶景とショッピング~ 10月11日(土)午後、「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」は、2万人目の入場者を得て、記念のくす玉割を行った。一つの展覧会で2万人を超えたのは、2015年8月の「異界へのいざない ― 妖怪大集合」展以来。くしくも、その時も水木しげる先生の妖怪画が出品され、先生に御来館いただいている。 今回の特別ギャラリートークで、長女の原口尚子さんが、その時の様子を印象深く語ってくださった。当時、体調がすぐれずふさぎがちだった先生を心配して、尚子さんが展示中の当館への旅行に誘ったのだという。水木先生は大変喜んでくれたとのこと。水木先生はその年の11月に亡くなられたので、尚子さんの「最後の遠出が五浦だったのです。」という言葉には感激した。五浦の絶景の海を最後にご覧いただけたことは、当館にとって光栄だった。現在のたくさんの人々の来館は、水木先生にも喜んでいただけていると思う。 さて、来館後に記念品として妖怪グッズを求め
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